Dream Japan


"OSHIN Mind"

「おしん」

(2013/01/06)


NHK連続テレビ小説「おしん」が新年2013年1月より放映30周年を記念して再放送を開始した。

平均視聴率は52.6%、最高視聴率は1983年(昭和58年)11月12日放送の62.9%(ビデオリサーチ調べ:第186回「戦争編・東京の加代」)の歴代最高記録を残した国民的人気ドラマだ。

1983年4月から1984年3月までの約一年間放映されたことも異例で、スリランカ、インドネシア、フィリピン、シンガポール、中国、香港、台湾、ベトナム、エジプト、アフガニスタン、イランなど世界75か国以上の国と地域で放送され、特にイランでは、視聴率90%超を記録した。

世界中に“おしんブーム”を巻き起こした不朽の名作は特にアジア、中東各国で絶賛され、北朝鮮の故金大中総書記も涙し、米国レーガン大統領もスピーチで引用し、当時の中曽根首相、田中角栄元総理大臣も”男おしん”として敗戦後の日本から高度経済成長を迎えた一国の首相になった自らを例えた。

小作農家の娘として「口減らし」のため、奉公に出され、当時は貧しい女性が字を習うこともままならず、それでも子守をしながら字を習い本を読む機会を掴み、明治~大正~昭和という時代を商人として生き抜いた辛抱強い女性の物語である。

多かれ少なかれ、当時の敗戦後の日本の中で育った人々の苦労をおしんは反映していたことも、実に2人に1人以上が観た国民的ドラマに押し上げたのだろう。

当時、とりわけ海外で『おしん』と名のつけられた子供たちもおり、アジア、中東各国でも絶賛の嵐だった。特に少女編で子役をつとめた小林綾子の演技は必見で、最初の奉公先での苦難や脱走兵俊作との与謝野晶子の「君死にたまふことなかれ」のくだり、酒田の豪商、米問屋の娘加代との対比と成長の過程などに多くの人が涙した。老若男女、親子で観ても人・物の有り難みがわかる感動作である。

大人編を引き継いだ田中裕子が主演のプレッシャーから撮影途中でダウンする異例の事態にもなったが、関東大震災や結婚、流産、そして戦争を経験しながら商人として生き抜く過程を演じた。

老年期を演じた乙羽信子も戦争という時代の変化の過程で夫と長男を失いながら、残された次男仁(ひとし)らと共に生き抜き、ダイエー創業者中内家やヤオハン創業者和田家をモデルにしたともいわれる商人(あきんど)として時代の同士とも言える渡瀬恒彦演じる浩太(こうた)らと共に見事に高齢期の苦難を乗り越えようとする姿を演じていた。

       

2013年秋には富樫監督、上戸彩、SMAPの稲永吾郎が両親役で、子役はオーディションによって選ばれ、映画上映が予定されている。

       

オリジナルのドラマも1月1日からの総集編を経て、6日より毎週日曜朝10時~全297話がNHK BSプレミアムで放映されることが決定した。



◆"State-of-the-Art Point":

"OSHIN Mind" - 「おしん」

        

「おしんのしんは信じるのしん、信念のしん、心もしんと読む。一番大事な辛抱のしんでもあるし、物の真ん中をしんというが、その芯でもある。新しいもしんだし、真実のしんでもあるし、辛抱のしん。そうだ、神様だってしんだ。」

        

少女時代のおしんに語った俊作あんちゃんの言葉だ。中国では「阿信」として一世を風靡したが、「信」はあて字であり、単に「信」だけでないところに「おしん」の深さがある。

        

「おしん」のいいところは、日本人が日本人としてのアイデンテティを感じられるドラマである点だ。さまざまなイジメや困難に遭遇しながら、「堪へ難きを堪へ忍ひ難きを忍ひ」ながら成長していくおしんの姿に視聴者自身のさまざまな苦労が反映されていく点が共感を呼んだのだろう。

        

実に国民の二人に一人以上が観たという平均視聴率52%も異常値だが、日本ではその共感はまもなく終息する。1986年から1991年まで、日本はかつてない「バブル景気」と言われる好景気に沸き、東京山手線の内側の土地だけでアメリカ全土が買えるといわれるほど資産価値が上昇した。

        

その後は主にアジアや中東各国で人気を博し、脚本家橋田 壽賀子の、そして日本のドラマの代表作となった。戦時下のソウルで大正14年に生まれた橋田 壽賀子は映画配給会社松竹につとめた後、退社し、脚本家になったが、或る明治生まれの女性が病床で書いた彼女の苦労話を記述した手紙を読んだ。

        

その手紙を元に明治生まれの女性の苦労話をテーマにした作品を作ろう、とTV局を回ったが当初は「地味過ぎる」とどこも取りあってくれなかったが、その後川口幹夫NHKドラマ担当部長の決断で「おしん」の放映が決まった。

        

後に川口氏は第16代NHK会長やNHK交響楽団の理事長らも歴任することとなった。

        

そして30年の月日を経て、「おしん」は映画として再演され、2013年1月より、山形県庄内映画村でクランクインされる。映画はおしんの中でも特に人気の高かった子供時代を中心に描かれる。

        

上戸彩と稲永吾郎がおしんの両親、ふじと作造をつとめることは決まったが、オリジナルで両親を演じた泉ピン子と伊東四郎の名演が光る代表作でもあるだけに、それを超えるのは難しいが、同様の名演が期待される。

        

80年代はすぐさまバブル経済の大好況に突入したため、「おしん」の日本人の美しい価値観は失われていったかのようであったが、2013年という長期のデフレに突入した時代にどういった反響を得るのであろうか。

        

「おしん」も震災も不況も経験した。同じように東日本大震災や長い不況を経験した、「おしん」を知る世代、そして知らない世代にも、「おしん」はどう映るだろうか。

        

1月1日の総集編を早速録画で観た限りでは、とにかく泣ける子供時代のおしんの純朴さがたまらない。1月13日(日)には、最も反響を呼んだ第7話のおしんの両親との離別のシーンが放映される。

        

ハリウッドでも賞賛を得た原作藤沢周平で、山田洋次監督がメガホンをとった「たそがれ清兵衛」(出演真田広之、宮澤りえ他)、同「武士の一分」(木村拓哉、檀れい他)、また2008年に第81回アカデミー賞外国語映画賞を受賞した滝田洋二郎監督の「おくりびと」(本木雅弘、広末涼子他)らが主に庄内地方で撮影され、庄内映画村やその周辺地域の街興しにも貢献しているが、「おしん」のリメイク映画版もその庄内映画村を中心に撮影されることが決定している。

        

オリジナルは日本、アジア、中東各国を席巻したが、何故か欧米諸国では大ブームには至らなかった。清貧、奉公という概念が受けなかったのか、翻訳や吹き替えが原作を忠実に反映できなかったのか。

        

ハリウッドでも「ラストサムライ」や「たそがれ清兵衛」らが賞賛されたのであるから、日本人のアイデンテティをうまく表現できれば、リメイク版は欧米の人にも受ける可能性はあるが、果たしてどういった仕上がりになるであろうか。

        

震災も不況も美しく乗り越えた日本が世界に誇る芸術的ドラマ作品「おしん」の精神こそ、今の日本人が忘れかけていたDNAを刺激し、再び成長の糧となってくれるであろう。

        

1月13日(日)放映予定のデジタルな、HDD家電に録画された再放送をこれから何度観ることになるだろう。
そして、映画版の出来栄えも含め、今から2013年になった現代に放映される「おしん」が楽しみでならない。

人は忘れる生き物である。しかし、この不況下の日本で、日本人が忘れかけていた「おしん」の心、"OSHIN Mind"を今度は忘れずに、日本自身も、リメイクする時が来た。


  

NHKオンライン
「おしん」第7話(8:40からが奉公に出される離別の名シーンが大反響に))
「おしん」テーマソング
「おしん」の舞台、庄内地方の「最上川舟歌」
アニメ「おしん」
「おしん」子役募集(Cinema Today)


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